多発性嚢胞腎とは

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)とは?

多発性嚢胞腎には、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)と常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)とがあります。
以下はADPKDについての説明です。ARPKDについては別項「 常染色体劣性多発性嚢胞腎について」で説明しています。

腎臓に嚢胞(水がたまった袋)がたくさんできて、腎臓が大きくなり、腎臓の働きが徐々に低下していく、遺伝性の病気です。腎臓以外にも、肝臓にたくさん嚢胞ができる人もいます。全身の血管にも異常があり、高血圧、脳動脈瘤、心臓の弁異常を伴う頻度が高くなります。その結果、脳出血・くも膜下出血の頻度が高くなります。

嚢胞性病変 嚢胞以外の病変
脳硬膜嚢胞 5~8% 腎不全 70歳で50%
腎嚢胞 100% 高血圧 60~80%
肝嚢胞 60~80% 頭蓋内出血 8~10%
膵嚢胞 5~10% 脳動脈瘤 5~12%
その他(脾臓、精巣、精嚢、卵巣など) 僧帽弁逆流 20~25%
腎結石 10~20%
総胆管拡張 40%
大腸憩室 80%

原因

ADPKD 遺伝子による違い
  PKD1 PKD2
頻度 ~85% ~10%
病状 厳しい 中程度
腎不全になる平均年齢 ~53歳 ~69歳
オッズ比
高血圧 1 0.25
尿路感染 1 0.50
血尿 1 0.59

遺伝子(PKD1、PKD2)の異常がわかっています。この遺伝子が作る蛋白(PKD1蛋白、PKD2蛋白)に異常があると多発性嚢胞腎になります。PKD1、PKD2どちらの遺伝子かによって、病状に差があります。

PKD蛋白は腎臓、肝臓、血管等で役割を果たしています。腎臓であれば尿細管の中を流れる液体の流れを感知し、肝臓であれば胆細管中の胆汁の流れを感知して、尿細管細胞や胆細管細胞が秩序よく並んで、尿細管や胆細管が本来の役割を果たす様に働いています。

PKD蛋白に異常があると、尿細管や胆細管細胞がチューブ状に行儀よく並ばなくなり、平面状に細胞数が増えてゆき、嚢胞が出来ます。

サイクリックAMPという物質があります。肝臓や腎臓などにホルモンが働くときに、ホルモンの作用を細胞内に伝える役割をしています。腎臓の尿細管では、抗利尿ホルモンの作用を細胞内に伝える働きをサイクリックAMPが担当しています。正常の細胞ではサイクリックAMPは細胞の増殖(細胞分裂)を抑制していますが、多発性嚢胞腎の尿細管細胞では、嚢胞細胞の数を増やし、嚢胞内への溶液分泌を促進します。

サイクリックAMPを増やす抗利尿ホルモンには多発性嚢胞腎の腎臓の嚢胞を大きくする作用があります。抗利尿ホルモンの働きを抑えると、嚢胞の増大も抑えます。

症状

多発性嚢胞腎の症状
血尿 31%
腰背部痛 29%
易疲労性 9%
腹部腫瘤 8%
発熱 7%
むくみ 6%
頭痛 5%
嘔気 5%
腹部膨満 4%

初期には無症状です。

血尿の原因はよく調べられていませんが、多発性嚢胞腎では、大きくなる嚢胞に血液を供給するため血管が豊富で、破たんしやすいのではないかと思われます。

腰背部痛・腹部膨満・嘔気:腎臓に嚢胞がたくさんできてくると、腎臓が大きくなり、腹がはってきます。大きくなった腎臓に加えて肝臓が大きくなる人もいますがその場合には両臓器の容積による腹部内の消化管圧迫で食事をとるのが制限され、少量食べただけでおなかがいっぱいになり、嘔気が起きることがあります。また、少数の患者さんですが両臓器が非常に大きくなった場合には、呼吸が苦しくなる、前かがみが出来ずに靴の紐が結べない、という場合もあります。臓器の圧迫以外に、重さで腰や背中に痛みが出現します。

嚢胞内に細菌感染をすることがあります。細菌の感染経路としては、血液から来る、尿路を逆行性に上ってくる、あるいは消化管から壁を抜けて直接到達する、等の経路が想定されますが、一度感染を起こすと嚢胞内に細菌がとどまり、周辺の嚢胞にも感染が広がります。発熱、感染部位の疼痛が起きます。嚢胞内に抗生物質が必要濃度到達せず、治療に難渋することがあります。

腎不全症状:腎機能障害の進行に伴って、貧血が出現し、疲れやすい、動悸がする、息が切れるなどが起きてきます。腎不全で、体内に水分が貯留すると、むくみ、夜間多尿、息切れなどが出現します。腎不全症状自体は、多発性嚢胞腎に特有なものでなく、他の原因で起きてくる腎不全の場合の症状と同じです。

頭痛は高血圧による場合がありますが、脳出血なども通常より高い頻度で起こります。

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