多発性嚢胞腎お役立ち情報

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「多発性嚢胞腎」という用語について

2013年7月29日

多発性嚢胞腎研究講座を担当することになって、やっとPKDに関するホームページを開設することが出来、感慨深いものがあります。

私が多発性嚢胞腎を研究し始めた頃(1980年頃)は、「多発性嚢胞腎」という用語は定着していませんでした。その頃は、「嚢胞腎」といっていました。この用語は、昔日本医学がドイツ医学に学んでZysten Niereを嚢胞腎と翻訳したことから由来していると思います。

戦後は英米医学に学ぶ様になりましたが、英米医学では、cystic kidney diseaseと広く名前をつけ、その中に Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease (ADPKD、常染色体優性多発性嚢胞腎)を位置付けています。「嚢胞腎」は広い意味での「嚢胞性腎疾患」に通じますし、Polycystic Kidneyと明確に用語で指しているものは「多発性嚢胞腎」と翻訳することが妥当です。

日本腎臓学会は「多発性嚢胞腎」を1988年に提案していましたので、日本泌尿器科学会や内科学会の用語委員会に「嚢胞腎」の用語を止めて、「多発性嚢胞腎」にするよう提案したことがあります。反応は迅速ではありませんでした。結局誰かが、その用語をもっともよく使う人たちが、「多発性嚢胞腎」という用語で文章などを頻繁に書いていれば定着するでしょうと教えてくれましたが、その通りになったと思っています。

「嚢胞性腎疾患」に関する命名で、まだ間違った用語のままで通じているのが「海綿腎」です。これは、一時(1960年代の数年間)英米医学でもSponge Kidneyといっていましたが、誤りに気づきMedullary Sponge Kidneyに訂正されています。腎臓全体(髄質+皮質)が海綿のようになるのはARPKD(常染色体劣性多発性嚢胞腎)です。Medullary Sponge Kidneyは髄質のみが海綿状になるので、やはり髄質海綿腎という用語が適切です。

コラムということで、用語について日頃思っていることを述べさせていただきました。(東原英二)