多発性嚢胞腎お役立ち情報

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腎臓容積測定法について

2014年3月18日

多発性嚢胞腎と腎臓容積

多発性嚢胞腎では腎臓容積は腎機能の低下と関係し、また腎機能低下の予測因子であると報告されています。これまで、腎臓容積は研究目的の為に、MRIにより比較的正確に測定されて来ました。

今回、多発性嚢胞腎の腎臓容積を測定しようと考えておられる医療施設の為に、MRIによる腎臓の長さ(長軸)と最大幅(幅)を測定して、腎臓容積を推測する方法について考察してみました。

多発性嚢胞腎の腎臓容積測定方法

多発性嚢胞腎の腎臓容積測定の基本はMRI または CT による volumetric 法です。
MRIで計測した左多発性嚢胞腎の例を示しています。
Volumetric measurement には 専用のソフトが必要です。比較的大きな病院では、放射線科の画像処理に付随したソフト機能として使用可能だと思います。
MRIはあるが、ソフトが無いという場合に以下に示すように、腎臓の長さ (L)、幅 (W)、奥行 (D)をMRI上で計測し、回転楕円体法で腎臓容積を推測する方法があります。

多発性嚢胞腎患者少数例での検討 (1)

多発性嚢胞腎患者少数例での検討 (2)

多発性嚢胞腎患者少数例での検討 (3)

多発性嚢胞腎、または腎臓モデルの容積測定に、回転楕円体法を使用した文献

1) O’Neill et al. Am J Kidney Dis 2005; 46: 1058.
MRIによる volumetric測定と超音波での3軸長測定による多発性嚢胞腎・腎容積の相関を調べている。超音波での3軸長(長さ、幅、奥行き)計測による腎容積推定は不正確。しかし、その中では腎長軸測定が最も再現性が高く、腎長軸とMRI腎容積の相関係数は0.84であった。

2) Fick-Brosnahan et al. Am J Kidney Dis 2002; 39: 1127.
超音波での3軸長測定し、推定した多発性嚢胞腎・腎容積を基に臨床観察結果と腎容積の関連を考察。超音波腎容積測定の信頼性については言及していない。

3) Solvig et al. Nephron 1998; 80: 188.
豚を麻酔後開腹し、経腹的に超音波で腎臓3軸長測定した。測定結果は腎臓容積と高い相関を示した。粘土で腎臓を作成し、3軸長と腎臓容積の関係式を求めた。

4) Bakker et al. Radiology 1999; 211: 623.
MRIによるvoxel-count 法に比し、超音波での腎臓3軸計測ー回転楕円体法による腎容積は平均25%(45ml)過小評価であった。

多発性嚢胞腎の容積測定に関連した文献等のまとめ

  1. MRIを使用したvolumetric 測定法が標準である。
  2. 多発性嚢胞腎の容積測定に超音波検査を用いるのは、正確性、再現性の面から問題がある。
  3. CTを用いるvolumetric 測定の精度はMRIと同等であるが、放射線被ばくの問題があるので、定期的容積測定に使用するには難点がある。
  4. MRI (あるいはCT)を用いて回転楕円体法使用を前提に、腎臓の3軸長を測定する場合、腎長軸に沿ったスライスで長軸(L)長を測定することにより、体積計算結果がより正確になると考えられる。その意味では、CTよりMRIが適している。

多発性嚢胞腎が年5%の増大速度であると仮定した場合の、年齢とTKVの関係

多発性嚢胞腎が年5%の増大速度であると仮定した場合の、年齢とTKV(総腎容積)の関係

  1. 上のグラフは、以下の仮定を前提としたグラフです。
     a) 20歳から腎臓が増大する
     b) 毎年5%で一定に増加する
     c) 20歳の時の腎臓サイズを 200mlから320ml と4段階に仮定。
    実際は、腎臓は胎児期から増大し始めているとの研究報告があり、また同一患者でも増大速度は毎年一定でありません。一般健康人の腎臓のサイズは、男女、身長(体の大きさ)、年齢などによって異なります。
  2. 現在のTKVが正確に測定できていれば、身体の大きさと年齢等を考慮し、過去の腎臓増大速度を大まかに推定できます。勿論、正確な増加速度(%/年)は測定してみないと判りません。

グラフから腎臓容積増加率について考えられる点

正確な腎臓容積増加率は測定してみないと判りませんが、

  1. 48歳以上の方で、総腎容積が750 ml 未満、
  2. 55歳以上の方で総腎容積が1000 ml 未満、
  3. 60歳以上の方で総腎容積が1400 ml 未満

(右下の薄緑色部分)であれば、総腎容積の増加率は5%未満であった可能性が高いと推測できます。

多発性嚢胞腎の、腎機能とTKV(総腎容積)の関係

(CEN 2014: 18:157-165より抜粋)

2007年から平均39.7か月観察した64名の多発性嚢胞腎患者さんの観察結果をまとめたものです。
腎機能が低下すれば、腎臓増大速度(TKV slope, ml/年)は増加しますが、%増大速度(%/年)は変わらないことがわかります。